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◆十億の母と我が母 |
![]() 明治大正昭和にまたがって活躍した暁烏敏(あけがらすはや)という仏教者が『十億の人に十億の母あらんも我が母にまさる母ありなん』と言っています。彼が生まれた明治時代、世界全体の人口は約10億人だったと言われています。その10億の人、一人一人に、男の人であれ、女の人であれ、誰にでも母親がいます。勿論母親が生きている人もいれば、既に亡くなって仕舞った人もいるでしょう。しかし人間の数だけ母親がいた事は事実です。現在、世界の人口は約60億人と言われていますから、さしずめ『六十億の人に六十億の母あらんも我が母にまさる母ありなん』とでもいう事でしょうか。世の中にこれだけの母親がおりながら、自分の母親よりも素晴らしく、そして尊く有り難い存在は、どんなに探してもいないというのです。大変明快で誰にでも良くわかる教えなのですが、本当にこの事を理解し、心の底から納得しているのか?と言えば私など甚だあやしい所があるんです。 |
◆渥美清の母親への便り |
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その点素晴らしいなあと思ったのが、映画『男はつらいよ』で、巧みな話術と、何処となく悲しみのある演技で、主人公のフーテンの寅さんを演じ続けた渥美清さん(以下敬称略)のお母さんに対する接し方なんです。まだ彼が『男はつらいよ』に主演する以前の事なんです。それは羽仁進監督による『ブワナ・トシの歌』という映画の撮影の時でした。渥美清演じるプレハブ住宅の建築技師が、アフリカの未開地に出かけ、現地の人達と心の交流をかわすといった内容の映画なんです。彼はそのロケの為に、昭和38年の8月からの半年間、アフリカ大陸のケニヤとタンザニアに缶詰になっていたんです。その彼が撮影を終えると、真っ直ぐに自分の部屋に戻り、誰かに『はがき』を書いているというんです。どんなに撮影で疲れた日でも、寝る前には必ず『はがき』を書くというんです。同僚の人は不思議に思う訳です。彼は毎日いったい誰に、何を書いているのだろうか?とね。そこで、その同僚は彼の机の上に置いてある、その『はがき』を悪いと思いつゝも、そっと盗み見するんです。まあぁ!誰だって不思議に思い、見たくなりますよね。そうしたら、その『はがき』にはこう書いてあったそうです。 |
◆螢と母親 | |
渥美清が亡くなった次の週、朝日新聞が出している『アエラ』という週刊誌に『追悼渥美清さん』という特集記事があり、その中に彼の俳句45句が掲載されておりました。それらは、2・3カ月に一度、アエラ誌主催の俳句会で彼が、読んだ俳句だったんです。彼はその句会に殆ど、欠かさずに出席したといいます。因みに彼の俳号は『風天』(フーテン)といったそうです。その45句それぞれに趣きがあるのですが、その中に彼が小さい時、母親に連れられて、螢狩り(ほたるがり)に行った時の事を、思い出して読んだ句がありました。私の大変好きな俳句なので、紹介したいと思います。 | |
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という句なんです。 | |
◆我々にとっての螢とは? |
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半年程前デジタル・ペット『たまごっち』なるものが売り出されました。大変な人気で、これが中々手に入りませんでした。何万円という値段(プレミヤ)がついて取引されているとか?車を買うと『たまごっち』が付いて来るとかいう噂が、まことしやかにささやかれました。ですから我々には、とても手に入る代物ではありませんでした。それでも子供にせがまれ、おもちゃ屋さんに何度か行き、やっとの思いで手に入れた『たまごっち』だったのですが、一ケ月がたちニケ月がたち、鈴虫が鳴くこの頃では、子供たちもそろそろ飽きて来て、面倒を見なくなって仕舞いました。ピッーピッー鳴いて『可愛そうだから、世話をしなさい』と言っても、子供たちはうわの空、結局今では私の家内が『たまごっち』の世話をやいている始末です。 |
◆近しと雖も而 |
法華経の中に我々のような凡夫は、よそ見ばかりして、本当に大切なもの、尊いものを見ようとしないと教えています。その大切なものは我々のすぐ近くにあり、そしてそれはあまりにも近いので、簡単には見えないというのです。 |
◆仏の世界を苦しみの忍土 |
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我々はモノが二つあって初めてその価値を理解する事が出来ます。ですからこの世に一つしかないものは、その価値が中々判りません。そこでこの一つしかないものを、今回は母親を例に取り上げてお話させて頂きました。本当は母親に限らず、我々自身も又、誰とも比べる事の出来ない「いのち」を生きています。 |
◆母の歳 超えて母の 夢を見る |
最後にこんな川柳を紹介します『母の歳 超えて母の 夢をみる』母の死んだ時の歳を、とっくに超えた、老いた息子が、死んだ母親の夢を見たというのです。我々はどんなに歳をとっても、或いは逆に、歳を取れば取る程、母親が恋しいようです。又悲しい事に我々のような凡夫は『亡くして見てはじめて知る親の恩』なのかもしれません。そんな時には、どうぞ亡きお母さんや御先祖様のお墓参りにお出掛け下さい。私も、暇を見つけ母の好きな『浅草舟和の芋ようかん』を買って実家の母に会いに行こうかと思っています。 |
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